犬のアロペシアXとは。毛が生えない原因と、もう一度きれいな姿を目指す治療に向き合うために

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毛が薄くなった部分がある犬の背中の被毛

「毛が生えてこない」「サマーカットをしてから毛が伸びなくなった」「左右対称に毛が薄くなってきた」などの症状で悩まれる犬の中には、「アロペシアX」と診断される犬がいます。

アロペシアXは命に関わる病気ではありません。そのため、「様子を見ましょう」「生活に支障はありません」と説明されることも少なくありません。一方で、飼い主さまの中には、「もう一度きれいな姿に戻してあげたい」と願いながらも、その気持ちを相談しづらく感じている方もいらっしゃいます。

当院では、被毛は見た目だけの問題ではなく、身体の状態を映し出す大切な指標の一つであると考えています。そのため、アロペシアXに対しても、見た目の改善だけを目的とするのではなく、身体の状態を整えながら被毛の回復を目指す治療を行っています。

このページでは、アロペシアXの一般的な特徴や治療法に加え、当院がどのような考え方でこの病気と向き合っているのかをご紹介します。

犬の被毛について、こんな悩み・経験はありませんか?

四季の森どうぶつクリニックは、皮膚病に特化した診療を行っています。そのため、治療が難しいとされるアロペシアXと診断された犬や、「毛が生えてこない」「サマーカット後に毛が伸びなくなった」と悩む飼い主さまが多く来院されています。

「命に関わる病気ではないので様子を見ましょう。」

「生活に支障はありません。」

「年齢の影響かもしれません。」

このような説明を受けたことはありませんか。

アロペシアXは命に関わる病気ではないため、積極的な治療が行われず、経過観察となることも少なくありません。しかし、「もう一度きれいな被毛に戻してあげたい」「若い頃の姿を取り戻してあげたい」と願うことは、決して特別なことではありません。

当院では、そのような飼い主さまの思いにも寄り添いながら診療を行っています。また、被毛は見た目だけではなく、身体の状態を反映する大切な指標の一つであると考えています。実際にアロペシアXが発症すると、皮膚が乾燥しやすくなったり、膿皮症などの皮膚トラブルを併発したりする犬も少なくありません。そのため、当院ではアロペシアXを単なる美容上の問題とは考えていません。身体の健康を取り戻すことを目指した結果として、被毛と皮膚の改善につながることが理想的な治療であると考えています。

アロペシアXとは?症状・原因・診断について

診察台の上でブラッシングを受けるシーズー

アロペシアXは、主にポメラニアン、トイプードル、シベリアンハスキー、チャウチャウなどが好発犬種として知られています。稀ではありますが、チワワ、パピヨン、柴犬でも起きるケースがあります。命に関わる病気ではありませんが、被毛が徐々に薄くなり、見た目が大きく変化するため、多くの飼い主さまが悩まれる病気の一つです。

【主な症状】

  • 左右対称に毛が薄くなる
  • 首、胸、お尻、太もも、しっぽなどから脱毛が始まることが多い
  • 頭部や足先の毛は比較的残りやすい
  • 痒みはほとんどみられない
  • 皮膚が黒ずんだり、色素沈着がみられたりすることがある
  • 進行すると広い範囲で毛が生えなくなることがある

【原因】

現在のところ、アロペシアXの原因は完全には解明されていません。毛周期の異常やホルモンの影響、遺伝的な体質などが関係していると考えられていますが、一つの原因だけで発症する病気ではないと考えられています。そのため、「なぜ発症したのか」を明確に特定できないことも少なくありません。

【診断に必要な検査】

アロペシアXには、この病気だけを診断できる特別な検査はありません。そのため、似た症状を示す他の病気を除外しながら診断を進めます。

  • 問診と身体検査
  • 皮膚検査(毛検査・皮膚検査など)
  • 血液検査
  • 甲状腺機能低下症の検査
  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の検査
  • 皮膚組織検査

このように、他の病気を除外したうえでアロペシアXと診断する方法を「除外診断」といいます。そのため、「毛が生えてこない=アロペシアX」と自己判断することはできません。まずは脱毛の原因を正しく調べることが重要です。

アロペシアXで知られている一般的な治療方法

手で被毛を分けて地肌と抜け毛を確かめている様子

「アロペシアXは治療しても毛は生えません。」

そのように説明を受け、不安な気持ちで当院を受診される飼い主さまは少なくありません。

しかし、現在ではそのように一概に言い切ることはできません。

アロペシアXには複数の治療法が報告されており、実際に発毛が認められた犬も数多く報告されています¹⁻⁵。

一方で、「この治療法が最も効果的」という標準治療はまだ確立されていません。同じアロペシアXと診断された犬でも、治療への反応は一頭一頭異なります。

そのため現在は、それぞれの犬の状態に合わせて治療法を選択することが推奨されています¹。

現在報告されている主な治療法をご紹介します。

不妊手術(去勢・避妊手術)

若齢で発症した犬では、不妊手術後に発毛が認められることがあります。性ホルモンの変化によって毛周期が正常化すると考えられており、繁殖予定のない犬では比較的早い段階で検討される治療法の一つです¹。

メラトニン

メラトニンは睡眠を調節するホルモンとして知られていますが、毛周期にも関与すると考えられています。比較的副作用が少なく、世界的にも広く使用されている治療法であり、数か月かけて発毛が認められる犬も報告されています¹³。

サプリメント

皮膚や被毛の健康を維持することを目的として使用されます。重症度の高い症例での改善率はさがりますが、副作用が少なく多くの症例で安心して使うことができます。

クッシング症候群治療薬(トリロスタン)

本来はクッシング症候群の治療薬ですが、アロペシアXでも発毛が認められた研究が報告されています。有効性を示した論文もあり、現在も有力な治療選択肢の一つとなっています⁴。

甲状腺ホルモン剤

甲状腺ホルモンは毛周期に深く関わっています。甲状腺機能低下症ではない犬でも発毛が認められることがあり、診断結果を踏まえて選択されることがあります¹²。

前立腺肥大症治療薬

男性ホルモンに作用することで発毛が認められる犬も報告されています。

外部刺激(マイクロニードリングなど)

近年、特に注目されている治療法です。極めて細い針で皮膚に微細な刺激を加え、休止している毛包を活性化することで発毛を促します。海外では高い改善率を示した研究も報告されており、今後さらに期待されている治療法です⁵。

このように、アロペシアXには複数の治療法が存在します。

次の章では、当院がどのような考え方で治療法を選択し、診療を行っているのかについてご説明します。

参考文献

Miller WH Jr, Griffin CE, Campbell KL, eds. Muller & Kirk's Small Animal Dermatology. 8th ed. Elsevier; 2021.

Hnilica KA, Patterson AP. Small Animal Dermatology: A Color Atlas and Therapeutic Guide. 5th ed. Elsevier; 2020.

Frank LA, Hnilica KA, Oliver JW. Adrenal steroid hormone concentrations in dogs with hair cycle arrest (Alopecia X) before and during treatment with melatonin and mitotane. Veterinary Dermatology. 2004;15(5):278-284.

Cerundolo R, Lloyd DH, Persechino A, Evans H, Cauvin A. Treatment of canine Alopecia X with trilostane. Veterinary Dermatology. 2004;15(5):285-293.

Kang MH, et al. Optimal microneedle length for hair regrowth in hair cycle arrest (Alopecia X) in six dogs. Veterinary Dermatology. 2024.

Gross TL, Ihrke PJ, Walder EJ, Affolter VK. Skin Diseases of the Dog and Cat: Clinical and Histopathologic Diagnosis. 2nd ed. Blackwell Science; 2005.

「美容上の問題」ではないと四季の森どうぶつクリニックが考える理由

スマートフォンを構える飼い主とこちらを見上げるトイプードル

アロペシアXは、一般的に「毛が生えなくなる病気」と説明されます。

しかし、四季の森どうぶつクリニックでは、単に被毛だけの問題ではないと考えています。

被毛は身体を覆うだけのものではなく、健康状態を映し出す大切な指標の一つです。身体のバランスが崩れると、皮膚や被毛にも変化が現れやすくなります。

また、被毛が失われることで皮膚は乾燥しやすくなり、外部からの刺激も受けやすくなります。その結果、膿皮症などの二次的な皮膚トラブルを併発し、さらに皮膚環境が悪化してしまう犬も少なくありません¹。

私たちは、このような状態では身体全体の健康状態が整わない限り、被毛も本来の状態には戻りにくいと考えています。

もちろん、多くの飼い主さまは「もう一度きれいな毛を生やしてあげたい」という思いで来院されます。

その一方で、「見た目のために治療を希望するのは、自分のわがままではないか」「毛を生やしたいと思うのは、人間のエゴなのではないか」と悩まれる方も少なくありません。

しかし、私たちはそのようには考えていません。

人は、健康で美しい被毛に魅力を感じる生き物です。そして、そのような被毛を取り戻してあげたいと思う気持ちの根底には、「健康な身体に戻ってほしい」という願いがあると私たちは考えています。

実際に、被毛は健康状態を映し出す大切な指標であり、被毛が失われることで皮膚は乾燥しやすくなり、膿皮症などの皮膚トラブルを繰り返す犬もいます。つまり、被毛は見た目だけの問題ではなく、皮膚の健康とも深く関わっています。

だからこそ、毛だけを生やすことを目的に治療を行っても、身体の状態が改善しなければ十分な結果につながらないことがあります。

四季の森どうぶつクリニックでは、美容目的で被毛だけを改善するのではなく、健康な身体づくりを第一に考え、その結果として健康な皮膚と被毛を取り戻すことを目標に診療を行っています。

私たちは、「素晴らしい毛並みに戻してあげたい」という飼い主さまの思いは、「健康な身体に戻ってほしい」という願いの表れであると考えています。その思いに寄り添いながら、身体の健康と被毛の回復、その両方を目指した診療を行っています。

参考文献

Loeffler A, et al. Antimicrobial use guidelines for canine pyoderma by the International Society for Companion Animal Infectious Diseases (ISCAID). Veterinary Dermatology. 2025.

四季の森どうぶつクリニックは、アロペシアXに悩む飼い主さまと一緒に治療に向き合います。

診察台の犬を挟んで笑顔で話すスタッフと飼い主

アロペシアXは、現在でも標準治療が確立されていない病気です。

だからこそ、診療経験の積み重ねが治療方針を決めるうえで非常に重要になると、四季の森どうぶつクリニックは考えています。

当院には全国からアロペシアXで悩む犬が来院されており、直接来院だけでなく、オンライン診療でも多くの発毛例を経験しています。

また、治療では一つの方法だけにこだわるのではなく、これまでの経験をもとに複数の治療法を組み合わせ、その子にとって最も改善が期待できる方法を積極的に選択しています。

「薬をたくさん使うと副作用が心配」というご相談をいただくこともあります。

しかし、これまでの診療では、体調不良などの副作用によって治療を中止せざるを得なかったケースは非常に少なく、多くの犬が治療を継続できています。

実際に、

  • 皮膚のコンディションが改善し、痒みがなくなった犬
  • 発毛とともに膿皮症を繰り返さなくなった犬
  • 14歳から治療を開始し、16歳で劇的な発毛が認められた犬
  • 複数の動物病院で改善が得られず、当院で治療を開始した後に発毛した犬

など、多くの改善例を経験してきました。

もちろん、すべての犬で同じ結果が得られるわけではありません。

当院はアロペシアXという病気に対して、飼い主さまの「きれいになってほしい」という思いと一緒に、世界で最も積極的に向き合う動物病院でありたいと考えています。

被毛が抜ける悩みについて、よくいただく質問

アロペシアXは、治りますか?
被毛が生えてくるまでには、とても個体差があります。アロペシアXは、原因や経過にまだわからない部分もあり、すべての犬で同じように変化が出るわけではありません。早く変化が見える子もいれば、時間がかかる子もいますし、「必ずもとどおり」とは言えません。その子の皮膚と被毛が今どのような状態かを確認し、無理のない方法で経過を見ていきます。その出発点として確認したいのが、その子の被毛が本来どうだったのか、です。
どの犬種に多いのですか?
ポメラニアンやトイプードルで、とくに多く見られます。チワワ、パピヨン、シベリアンハスキーなどでも見られることがあります。ただ、同じ犬種でも出る子と出ない子がいます。犬種の傾向は参考になりますが、診察では犬種名だけで判断せず、その子の被毛がいつからどのように変わってきたかを確認します。
毛はほとんど抜けないのに、薄くなってきました。脱毛症でしょうか?
被毛があまり抜けていないことだけで、問題がないとは言えません。新しい被毛が生えてこないために、古い被毛だけが残っていることもあります。被毛が硬くなった、細くなった、色が薄くなった、伸びにくくなったといった変化があるときは、皮膚と被毛の状態を確認します。
どれくらいで、被毛が生えてきますか?
個体差が大きい病気です。数か月で変化が見える犬もいれば、一年ほどかけて少しずつ変わっていく犬もいます。毎日見ていると変化に気づきにくいため、月に一度など日を決めて、同じ場所を同じ角度で撮っておくと、経過を確認しやすくなります。
高齢ですが、ケアはできますか?
高齢だからといって、何もできないと決める必要はありません。当院では14歳15歳からアプローチする子もいて、16歳で改善したケースもあります。その子の健康状態をしっかり把握しながら、その子と飼い主さまにとって無理のない範囲で、何をどこまで行うかを一緒に考えます。

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参考情報(外部)

会社情報

会社名 四季の森どうぶつクリニック メディカルスキンケアセンター
住所 〒470-1154 愛知県豊明市新栄町1丁目179
代表者 院長 平川 将人
電話番号 0562-85-2215
診療内容 犬の皮膚病治療(皮膚科)・メディカルスキンケア療法

Contact完全予約制・ご相談はお気軽に

Contact当院は犬の皮膚病だけに特化した
動物病院です。

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