院長平川の天真爛漫ブログ

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医療の進化 エビデンス×経験

2018.07.10

こんにちは、四季の森どうぶつクリニックの平川です。

普段は皮膚科ばかりの当院ですが、皮膚科以外でも重病でなければ診れる範囲でみたりします。

また昔からの患者さまはそのまま診ていますので、今でも皮膚科以外を診る機会は少なくありません。

今日紹介するのはそんな「皮膚病ではないけど、昔から来ているわんちゃん」の症例です。

【症例】

 柴犬 約8歳半 女の子(避妊手術済み)

【経過】

 〇生後9ヶ月のころから繰り返す下痢・食欲不振・時々嘔吐

 〇抗生物質、一般的な下痢止め、プロバイオティクス、消化管用療法食などのによる改善なし

カルテNOは2桁台とまさに開業当初からの患者さまで、生後2ヶ月の混合ワクチンのときからずっと今日まで診させてもらっている柴犬です。

経過は非常に長く、極端な重症化はしないものの、間欠的に胃腸炎の症状がでています。

その診療回数ですが、1歳前を初発に4歳までの間に20回以上です。

投薬治療はもちろん、レントゲンや消化管バリウム造影検査をするほどの再診を重ねました。

療法食はサンプルなど合わせて合計7種類、サンプルの時点で吐くものは継続不可能として3種類は一定期間継続していただきましたが、どれも明確な改善はありませんでした。

4、5才以降は落ち着き、月1回か多くて週1回の下痢で、自然治癒する軽度なため治療歴はありません。

変化があったのは8歳を越えた今年の6月、4月の血液健康検査の異常値の再検査のために来院されたときに「1ヶ月前からまた週1回下痢するようになった(毎回1回の下痢のあとは続かず自然治癒)」とのお話を伺いました。

この瞬間「いける」と確信をえることができましたので、改めて治療方針を提案させていただきました。

もちろん週1回の自然治癒は過去にもあって無治療であった期間もあるため、様子を見るプランもありましたが、今回は今までにない治療プランを提案できる確信がありました。

そう、あの2年前に発売された皮膚科の痒み止め新薬アポキルです。

    IBD(慢性腸症)に新薬アポキルが効く?

「今こういう報告があって・・・効くと思います。」

「この報告は僕なんですけどね(笑)」

で、了承を得ることができました。

抗生物質、下痢止めなどは処方せず、併用は当院が開発したスキンケアECプラスのみとしました。

そして4週間後・・・

下痢は一回もなし!

とっても喜んでいただけました♪

久しぶりの会心の診察に、僕もかなりテンションあがりました(笑)

もちろん良くなったこと、飼主さまが喜んでくれたことがうれしいのは同然ですが、この診察には他にもいろいろ詰まっています。

1つは「昔できなかったことが、今はできるようになった」こと、2つ目は「当院でしかできない医療であること」、そして3つ目は何より「標準医療ではない個人的治療に飼主様が理解してくださったこと」ですね。

この仕事は本当にしんどくて、普段は「18歳にもどれるなら絶対この道に進まない」と思うのですが、こういう瞬間があると「この仕事たのしい」って思い直すことができますね♪

今回は経験からいい結果をえることができましたが、実は今の時代にこのようなことは難しいです。

今のご時勢の医療は「二言目にはエビデンス」で、基本は教科書の範囲内でしか治療がやりにくいのが現状です。

ただ教科書にかかれているのは印象操作と数学的な分析ようなものも多く、「既存の範囲内で表現すれば」というようなものも含まれるので、常に正しいとか新しいものばかりではありません。

個人的にはゼロを1にするためには既知から外れる「攻めのチャレンジ」もあっていいと思っています。

もちろんエビデンスを無視していいという意味ではなく、エビデンスなどを把握しつつ、新しい今までなかった視点でもものをみる習慣と、日常にころがっている何気ないヒントを感じるアンテナがあればもっと進化できるのではないか、という意味です。

万が一がないようにしなければいけないので、確信がないとできませんけどね(^^;

・・・おまけ・・・

カルテを見直すと、通院が続いているのにも関わらず途中から下痢の症状の記載がほとんどなくなっていました。

今だからわかるのですが、そのときは柴犬に多いアトピーがでていたので間欠的にステロイドを服用していました。

ステロイドも慢性腸症(IBD)に効くので、一定期間継続して服用した結果症状が治まったのかな?と推測します。

このアトピーはこの数年でていないのでステロイドも使っておらず、最近になってまた「免疫異常のスイッチが入った」のだと思います。

あと数年後には下痢の治療にアポキルの選択肢が普通になるのかもしれませんね。

もちろん今回は過去の経過を把握してる症例だからこその「最初からアポキルでいける」という判断であって、一般的にはファーストチョイスではないです。

さらについでのおまけですが、春の血液健康検査の異常値は「わずかな低アルブミン」でした。

他の症例もそうなのですが。おそらくスキンケアECプラスの継続でアポキルも徐々に減らすことができると思います。

投稿者:四季の森どうぶつクリニック

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